「商品秘話」

プロローグ 一杯のラーメン

2018.02.28

 ラーメンほど、不思議な食べ物はありません。たった一杯の丼のなかに、人生の悲喜こもごもを思わせる、何かが溶け込んでいるように感じるからです。きっと皆さんにも、一度や二度は、大切な人と過ごした思い出の一つとして、ラーメンを味わった記憶があるのではないでしょうか。幼いころ、麺工場が休みの日に、母に連れられ食べた一杯の醤油ラーメン。一つの丼を親子でふぅふぅしながら食べた思い出が、幸せな味の記憶として、私の心に染みついています。

 人々の胸に刻まれるラーメンのある風景。菊水では、年間1億食以上のラーメンを生産しています。けれど、私たちの手を離れた1億食分の1個は、それを食べる、たった一人のためにある一杯です。お腹を満たすための一杯、寒さを癒す一杯、誰かと分かち合う一杯。その一つ一つが、心を満たす一杯になり得ることを、決して忘れてはならないのです。

 菊水のものづくりは、1億食をつくっても心に届く一杯であること。それぞれの誕生秘話に込められた商品開発への熱意を、エッセイとともにお届けいたします。

代表取締役社長 杉野 邦彦

プロローグ 一杯のラーメン